宮城県図書館だより「ことばのうみ」第30号 2009年3月発行 テキスト版
おもな記事。
- みやぎ本の杜。
- 特集図書館のお仕事その2 県域の図書館を結ぶ。
- 県図トピックス。
- 図書館員から読書のすすめ。
- 図書館 around the みやぎ シリーズ第25回 東松島市図書館。
- 叡智の杜レポート。
- 図書館からのお知らせ。
みやぎ本の杜。宮城ゆかりの作家を、作品の一節とともに紹介します。
春が二階から落ちてきた。
私がそう言うと、聞いた相手は大抵、嫌な顔をする。気取った言い回しだと非難してきたり、奇をてらった比喩だと勘違いをする。そうでなければ「四季は突然空から降ってくるものなんかじゃないよ」と哀れみの目で、教えてくれたりする。
春は、弟の名前だ。
頭上から落ちてきたのは私の弟のことで、川に桜の花弁が浮かぶあの季節のことではない。
春は私の二年あとに生まれた。パブロ・ピカソが急性肺水腫で死んだのがまったく同じ日で、1973年4月8日だった。
弟が生まれた時、私ははしゃいでいた。覚えているわけがないが、そのはずだ。少なくとも、親の苦悩や、周囲の人間の冷ややかな目の理由には気づいてもいなかった。
そして、その弟が二階から落ちてきたのは、それから16年後、つまり彼が高校生の時のことだ。
『重力ピエロ』 新潮社 2003年 7ページより
著者のご紹介。
いさか・こうたろう 伊坂氏は、1971年千葉県生まれで、仙台市在住の小説家です。2007年の作品『ゴールデンスランバー』(新潮社)で第5回本屋大賞及び第21回山本周五郎賞を受賞し、また2009年4月には『重力ピエロ』(新潮社)が仙台・宮城ロケにより映画化、公開されるなど、ますます注目が集まっています。
作品そのものの魅力とともに、「広瀬通りを西へ向かい、大学病院に突き当たる道で信号待ちとなったところだった。病院の看板が浮かび上がるように光っている」(『ラッシュライフ』 新潮社、2002年)といった、仙台の風景が多く描かれることも、みやぎの読者には嬉しいポイントです。
特集図書館のお仕事その2 県域の図書館を結ぶ。
図書館を訪れるみなさまの「知りたい」「読みたい」という思いは、千差万別です。宮城県図書館では、その一つひとつに応えていくために県内市町立図書館や公民館図書室と連携しながら、県内全域に向けた図書館サービスを展開しています。今回は、本誌28号「図書館のお仕事」の第2回目として、県域を結ぶ図書館ネットワークについてご紹介します。
宮城県内の図書館事情。
宮城県には現在、36の市町村がありますが、そのうち図書館を設置しているのは21市町です。1市町につき図書館1館というところがほとんどですが、中には加美町の中新田図書館と小野田図書館、登米市の迫図書館と登米図書館などのように、ひとつの自治体の中で2館体制をとるところもあります。あるいは、石巻市や気仙沼市などのように、本館-分館体制をとるところもあります。いずれも、市町合併を機に図書館のあり方を整備し直したものです。
一方で、図書館を設置していない町村では、公民館図書室が住民の読書施設の働きを担っています。おはなし会や展示会など、活発に住民サービスを展開している公民館図書室もあります。
本館では、県域の図書館や公民館図書室(以下「図書館」と総称する)を結び、県民の皆様により身近に感じられる図書館サービスを提供するために、図書館資料と職員を結ぶネットワークを構築しています。
図書館を結ぶネットワーク。
もっと近くで利用できます。
読みたい本や情報が身近な図書館で見つかればよいのですが、そうでない場合には、お住まいの地域にある図書館を通して、他の図書館の資料を取り寄せ、利用することができます。
本館が所蔵する資料に対しても、取り寄せ依頼が毎日のように舞い込みます。依頼を受け付けた資料は、各図書館ごとにまとめて梱包し、毎週1回宅配便で発送しています。また、他館同士で貸借される資料についても、本館経由により一括で梱包・発送しています。多い時には、一度に発送する資料の数が100点を超えることもあります。
県域のどこに住む方であっても図書館の資料を利用できるために、物流のネットワークを一元化し、より円滑に維持することを目指しています。
図書館サービス向上のために。
図書館では、数多くの資料を収集・保存していますが、資料を探しやすいように整理したり、情報を探す方のお手伝いをするためには、図書館職員による日々の工夫や努力が欠かせません。本館では、図書館職員を対象として、破損した資料を修理する実技を行ったり、調べものに役立つ資料(レファレンスツール)について学ぶなど、専門的な研修会を主催しています。また、年に2回は各図書館を巡回して、各図書館の現状や困っていることなどの情報を交換しています。
職員がお互いに学びあい、情報を共有することで、県域全体の図書館サービスの向上を目指しています。
より迅速に、効率よく。
資料と職員のネットワークを強力にバックアップしているのが、「宮城県図書館情報ネットワーク」(以下、略称「MY-NET」(マイネット)という)です。MY-NETは、参加登録している図書館だけが利用できるオンラインシステムです。蔵書の横断検索や、他の図書館に対する資料取り寄せの依頼を行うことができるので、図書館間における資料利用の情報を一元的に管理することができます。また、利用者からのレファレンスについて、自館で所蔵する資料だけでは回答が難しい場合、他の図書館で所蔵する資料について照会をかけることもできます。
MY-NETは、県域の図書館の結びつきをより円滑で効率的なものとするのになくてはならない、情報のネットワークです。
県図トピックス。一部の県民の間で使われる「宮城県図書館」の略称「県図」。県図の話題をご紹介します。
蔵書点検。
平成21年1月29日(木曜日)から2月11日(水曜日)まで、特別整理期間として休館し、蔵書点検を行いました。「図書館資料の棚卸し」ともいえるのが蔵書点検で、資料に貼っているバーコードを専用の機械で1点1点読み込んでいきます。読み込んだデータで資料の状態を把握し、また目視によって修理が必要な資料を見分けます。ほかにも書架の清掃など、職員が総出で蔵書点検に取り組みました。
図書館員から読書のすすめ 春が来たら外へ出よう~自転車に乗っていて感じたことから選んだ本たち~
寒い中にも少しずつ春の気配を感じるようになってきました。
私は自転車に乗るのが大好きです。桜吹雪舞う春の朝、蝉しぐれ降りしきる夏の夕暮れ、木枯らし吹く晩秋、そして雪から逃れるように差し込む冬の日差しの中・・・四季折々、それぞれ楽しみは違いますが自転車に乗っているといろいろなことを目にし、また感じることができます。
道端の小さな花やそれに集まる虫たち。
川べりでみかける小鳥たち。
坂道を登り切って見える、まるで絵画のような一瞬の絶景。
自分の心臓の鼓動と風を切る音、それに絡むヒグラシの声の絶妙なセッション・・・
そして、なぜ?と感じることもたくさんあります。
倒木だらけの杉林。
人目に付かないところに山積される不法投棄物たち。
お年を召した方たちばかりが働いている田畑の姿。
車ばかりで人が歩いていない町の風景・・・
自転車に乗っていて見つけたそんな「なぜ?」や「感じたこと」を基準に本を選んでみました。ものすごく雑多な選択ですので気になった本が一冊でもあれば幸いです。
自転車に乗っていると、毎年確実に衰えていく体力を痛感しながら、情熱をもって長く一事にあたる人への憧れがより強くなっていきます。
子供のころと変わらぬ生き物を目にしたり、いつも何気なく見過ごしていたものが全く違って見えたりすることに驚きを覚えたりします。
そして、自分の好奇心だけは子供のころとあまり変わらないことをうれしく思ったりもします。
さあ、今日はどこへ行こうか!!
みなさんも外へ出てみませんか?
こんな本を選びました。
『華麗なる双輪主義 スタイルのある自転車生活』
小池一介著 東京書籍 2006 年 536.86/2006.5
『日本の鳥 2003 写真集』
バーダー編集部編 文一総合出版 2004 年 748/ ニホ2004.5
『野にいます 内田新哉画集』
内田新哉著 サンリオ 1998 年 726.5/ ウシ1998.8
図書館 around the みやぎ シリーズ第25回 東松島市図書館館長 浅野 健一。
東松島市図書館は、昭和30年5月に矢本町立図書館として設置され、現在の図書館は平成5年6月に移転新築しました。
平成17年4月には、矢本町と鳴瀬町が合併し東松島市となり、名称が東松島市図書館に変更されました。人口は4万4千人、市内の学校も14校になり図書館のサービス範囲が拡大し充実も望まれていますが、小・中学校とも連携し読書の推進を図っています。
合併を機会に、地域の生涯学習の拠点であります市内5つの公民館とネットワークを結び、図書の検索・利用状況・予約等が双方で確認できるようになり、利用者からも喜ばれています。
職員・ボランティアによる週2回のおはなし会、環境に優しいEM石けん作り、しゃぼん玉&スライムで遊ぼう!、防災ブックバック作り教室などの各種講座や行事を行っています。中でも毎年10月の図書館まつりには、大勢の人が訪れて大変賑わっています。
今後も利用者のニーズに応えられるよう限られた予算、人員の中で創意・工夫をしながら、気軽に利用してもらえる親しみある図書館を目指し、職員一同努力して参ります。
東松島市図書館のご紹介。
図書館のデータ。
蔵書冊数:121,010冊。(平成19年度末)
貸出冊数:237,589冊。(平成19年度実績)
開館時間:9時00分~17時00分(火曜日・水曜日・金曜日)
9時00分~19時00分(木曜日)
9時00分~16時00分(土曜日・日曜日)
休館日:毎週月曜日、祝日(祝日が月曜日のときはその翌日)、毎月最終金曜日、年末年始、特別整理期間(2月)。
交通:JR矢本駅から徒歩15分。
住所:郵便番号981-0503 宮城県東松島市矢本字大溜1-1。
電話番号:0225-82-1120。ファクス番号:0225-82-1121。
叡智の杜レポート。『宮城県図書館振興基本計画』に基づく行動計画を策定しました。
宮城県図書館では、平成20年3 月に「宮城県図書館振興基本計画」を策定しています。この計画は、以下の3 つを大きな柱としています。
「生涯学習に役立つ図書館」
多様な「学び」を見据えた図書館を目指すため、資料の収集・整備を充実し、資料や情報を入手しやすくするための様々な工夫に努めます。
「情報の拠点としての図書館」
「みやぎ」を支える情報の拠点としての図書館を目指すため、県内の市町図書館及び公民館図書室への支援を充実させることにより、県全体への図書館サービスの向上を図ります。
「次世代を育成する図書館」
ふるさと・みやぎの叡智を次世代へ伝える図書館を目指すため、職員がより専門的な知識・技術の一層の向上を図ることができる環境づくりに努めます。
この振興基本計画に基づいて、どのようなことを行っていくのか具体的に示す行動計画(アクションプラン)を、平成21年3月に整備しました。振興基本計画及び行動計画を拠り所として、情報の拠点としての機能を強化し、地域文化の保護・育成・活用を進め、県民の皆様のより充実した生涯学習を支援できる図書館を目指していきます。
図書館からのお知らせ。
特別展 地図~世界を規定する試み~
地図に関する基本的な知識のほか, 街中を迷わず歩くためのヒン トをご紹介します。また、国の重要文化財に指定された『坤輿万国 全図』、宮城県有形文化財の指定を受けた『仙台領際絵図 相馬領境』 (いずれもレプリカ)、『遠田郡桃生郡境塚図』なども展示します。 体験コーナーもありますのでお気軽にご参加ください。
期間は平成21年3月7日(土曜日)から平成21年6月28日(日曜日)。
時間は図書館開館日の午前9時30分から午後5時00分まで。
場所は図書館2階展示室。入場料は無料です。
問い合わせは企画管理部企画協力班(1階)電話番号:022-377-8444。
第40回 子どもの本展示会を開催します。
図書館・公民館・学校・家庭などで、子どもたちが本の世界の楽しさを共有するのに役立ててもらうことを目的に、昨年出版された子どもの本約1500冊のほか、朝読書に関する本などを展示します。展示資料は手にとって自由にご覧いただけます。子どもの本選びの参考に、ぜひご来場ください。
期間は平成20年12月6日(土曜日)から平成21年2月27日(金曜日)。
時間は図書館開館日の午前9時30分から午後5時00分まで。
場所は図書館2階展示室。入場料は無料です。
問い合わせは資料奉仕部調査班(3階)電話番号:022-377-8483。
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Eメールkikaku@library.pref.miyagi.jp
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本館では、皆様から寄せられた多くの質問・相談の中から具体的な事例をご紹介するために、「レファレンス事例集」を作成し、ホームページ上で公開しています。資料を探す際の参考として、ぜひご覧ください。
この「ことばのうみ」テキスト版は、音声読み上げに配慮して、内容の一部を修正しています。
特に、句読点は音声読み上げのときの区切りになるため、通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は、宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第30号 2009年3月発行。